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「だれのための最低賃金引き上げか」


おはようございます。
エム・アイ・シー・コンサルティングの神宮です。


お盆を過ぎ8月後半に差し掛かりますが、相変わらず残暑は厳しいですね。
8月の前半から2つの台風の発生により
帰省や旅行に大きく影響を受けた方も多かったようです。
僕は鹿児島に帰省をしましたが、幸い台風の影響は受けず
鹿児島でやりたいことはすべて実行できました。


やりたいことと言ってもたいそうなことではありませんが、
お墓参り、親孝行、仲間や恩師に会うことができました。
広島から鹿児島の距離だとお盆と正月の年2回しか帰省はできません。
日常の多くの時間を広島で費やすことと比べると
ほんのわずかな時間ですが、少ない時間だからこそ大切にしようとすると
あっという間に過ぎてしまいました。
自分が長年時を過ごしたところなので、たくさんの思いがあり
思い出し懐かしく思う時間でした。


さて、2023年度の最低賃金が各都道府県で出そろいました。
国が目指していた全国平均1000円を超えそうです。
今年は過去最大の上げ幅で、物価高騰の影響を反映した形となります。
原材料、ガソリンなどエネルギー料金が値上がりする中での最低賃金改定は、
中小企業には非常に厳しいと言わざるを得ません。


ただ最低賃金改定が所得向上につながり
消費が活性化され企業業績が向上するなら大きな意味を持ちます。
安定的かつ持続的な物価上昇を伴うのであれば
経済には良い循環ができます。
これが、政府が目指す姿です。


でも実際はどうでしょうか?
最低賃金の上昇は所得の増加につながっていません。
最低賃金の全国平均は20年前と比較して今年で改定で5割増加、
10年前と比較しても3割上がります。
しかし、皆さんご存知のように年収ベースでの賃金は日本は20年間ほぼ
変わっていません。
パートタイマーの年収の伸びもわずか5%です。


どうしてこんな矛盾が起こっているのでしょうか。
理由は明快です。
扶養という「年収の壁」の存在です。
所得税の壁と社会保険料の壁です。
最低賃金の上昇により企業はパートタイマーの時給をあげますが、
扶養の枠の中で働こうとする人は、逆に働く時間数を減らすので
年収は全く変わりません。
事実、パートタイマーの労働時間は内閣府によるとこの25年間で
2割減っています。


ということは、政府がどれだけ最低賃金を上げて所得向上を目指したとしても
所得増加にはつながらず、消費も活性化することなく
ただ人手不足感が一層強まる企業にしわよせが及ぶだけだということです。
この年収の壁がある限り。


一体だれのための最低賃金改定なのでしょうか。
何十年もやってきて、どうしてこんなことが分からないのか
政府、政治家、官僚にはがっかりすぎて言葉もありません。
年収の壁を撤廃しない限り、夢物語に終わります。
日本企業数の99%である中小企業の首を絞めるだけです。
年収の壁がなければ、所得向上を望む人は何にも縛られることなく
いまより自由に自分の力を発揮できます。
いまは、この規制がある限り、自由にしたい人の手足を縛っている状態です。


極論ですが、
能力の向上はなく法律により自動的に時給が上がるという企業側の立場に立てば
扶養の枠で働く人とそうでなく時給で働く人との最低賃金を変えたほうが
良いとさえ思います。
本来賃金は、能力向上に対して、その役割の重要性に対して、
会社への貢献に対して支払われるものです。
国が一律に決めて何もまだできないアルバイトでも
1年前に入社したアルバイト労働者より時給を高くしなければならないのは、
経営視点では容易に受け入れることはできません。
それでも法律なので従わざるを得ないのですが。


何とも言えない悪法です。
最低賃金をあげれば、全体の所得が上がるなどとまさかいまだに思っているのでしょうか。
あまりにも現状に無知な経済が分かっていないとしか言いようがありません。
しかもまた訳が分からないことに、一定の年収を超えると社会保険に加入し
保険料負担により手取り額が減るため、減らないように助成金を出すとかという
構想があります。
根本的な問題はそこではない、と言いたいです。
いま現在、同じレベルの年収で社会保険に加入している人との処遇格差は
どう考えているのでしょうか。
格差を国が自ら演出するのでしょうか。


もしこれが実施されたら、数年後、どんな状況になるか容易に想像がつきますが、
岸田さんはそこまでお分かりでしょうか?


最低賃金を上げていく方向は間違っていませんが、
その効果をゼロにしてしまう矛盾した制度を撤廃しない限り
選挙目的の表面だけの政策を相変わらずやる自民党という国民の不信は
永遠に解消されないでしょう。
今回の最低賃金上昇額は、中小企業には死活問題です。
人件費は増える上に働く時間調整がさらに進行することで
人手不足は一層増します。
この現状を分かっているでしょうか。
残念でなりません。
この報道があるといつも憤りを覚えてしまいます。


本日も最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
この週末も全国的に気温が非常に高い予報です。
どうぞご自愛ください。